江戸のうどん屋で働き始めました



突如、私の頭の中に知っている声が響いてきた。

机を拭いていた手が止まっていて、ハッとする。



…嫌なことを思い出しちゃったな



頭に響いてきたのは、クラスメイトや「家族」たちの声だった。


以前は夢でそんな声にうなされることもあったけど、この時代に来てからは一度も思い出していなかった。



…どうして今



私は、その忌まわしい声を頭から振り払うように、息を深く吸った。



「よし…!」



小さく声を出して気合いを入れ直す。


今はとにかく、目の前の仕事に集中したい。



また一人、お客さんが入ってきた。



「いらっしゃいませ!」



私はそのお客さんをそんな風に、無理やり明るい声を出して出迎えたのだった。



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