隣の部屋と格差社会。


「お手伝いさんがいたもので、台所にも片手で数えられるほどしか入ったことがなくて。」


さすがにこれには驚いたようで、目を丸めて少しだけ固まった。


「お嬢様っていうやつか。」

「そう、なんでしょうね。」


自分勝手な私は、自分で話を振ったくせに言葉を濁す。


佐渡さんはそれ以上なにも聞かなかった。

詮索しないんだ。大人だな。



結局、炊き上がったお米の混ぜ方まで教えてもらい、挙げ句の果てにおかずを用意してなかった私に佐渡さんの夕飯の残りだという青椒肉絲とお漬物までくれた。


佐渡さん、なんていいお隣さんなんだろう。


普通は、お隣さんがこんなにも親切にしてくれるなんて奇跡だということを常識知らずの私は知る由もなくて。


ただ、佐渡さんに感謝していた。



ああ、私の『自立』は一体いつになったら出来るんだろう。


頼れる隣人さまを見つけてしまった私には、まだまだ遠そうな話だ。


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