隣の部屋と格差社会。
お嬢様、初めての満員電車。



日焼け止めは念入りに。


下地やファンデーションを塗った肌にパウダーを軽くはたき、眉毛を整え、口紅を。


お祖母様から成人のお祝いに貰った、お気に入りの真紅の口紅はちょっとお休みだ。


代わりに、春らしいほんのりピンクのリップを塗って完成。


まあ、お化粧なんてすぐに剥がれ落ちることにはなるかもしれないけど。


髪の毛は気合いの編み込みを。



黒のジーパンに、アイボリーのブラウスを着ると仕事用のトートバッグを肩にかけた。


あれもいるかな、これもいるかな、と悩んだ挙句パンパンになったバッグからは、着替えのポロシャツ、それと新調したエプロンがちらりと覗いている。


絵本の『大きなかぶ』がモチーフとなっているこのエプロンは本当に可愛らしい。


けれど、そんな可愛らしいエプロンも今日の私にとっては戦闘服だ。


4月1日。天気は晴れ。
春の陽気が清々しいこの日、私の新たな人生が始まる。


憧れていた、お仕事初日だ。

< 28 / 250 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop