隣の部屋と格差社会。



私がずっと憧れていた仕事。



それは、『保育士さん』という仕事。


父の決めた学校に通い、父の選んだ習い事を何のためらいもなくこなしていたこの25年間。

そうやってずっと、父の言う通りにしか生きていけないと思っていた。


幼稚舎のときに書いた七夕の短冊。小学校の卒業文集の『将来の夢』という欄。
中学で初めて書いた進路希望調査。


どれも、『保育士さん』と書いた。


なんでだろう。正直、理由はよく覚えていない。


当然のごとく専業主婦だった母、物心ついたときにはもうベビーシッターさんがついていて『保育園』という場所自体にも無縁だったはずなのに。


ただ、昔からこども達と遊ぶのは好きだった。


歳の離れた従姉妹、芽衣ちゃんや穂花ちゃん、陽子ちゃんなどとはすごく仲良しで、よく面倒も見ていた。


だからかな。


『自分のレベルや周りの状況を一切考えず、やりたいことを書きなさい。それが、若いあなた達だからこそ持っている権利よ。』



6年生のときの担任の先生が教壇で言った言葉を聞き、将来の夢の欄に『保育士さん』と書いたのは。


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