【第二章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を

激突!! マダラVSティーダ

――ドォォオンッ!!

 一際激しい爆風が地鳴りを伴って静寂を破った。
 ガラガラと崩れる砂煙と瓦礫のなかから姿を現したのは大鎌を手にした<冥王>マダラだった。

「ざけんなっ! 洒落になんねぇぜっ……!」

 後方に一回転したティーダは跡形もなく消し飛んだマダラの部屋から外へ出た。

「準備運動にもならないな。この程度の力でキュリオ殿とやりあおうってんだから笑いが止まらない」

「……っ!」

(……<冥王>の力は特殊能力のはずだっ……なのにこの力はなんだってんだ……!?)

「休んでる暇はないぞ」

 頭上の灰色の靄のなかから突如姿を現したマダラの大鎌が再び振り下ろされる。

「……クソッ!」

 マダラの繰り出す一撃のスピードはティーダが目で追えないほどに速い。閃光が煌いた瞬間に神具でガードするも、力で競り負けたティーダの体は地面に叩きつけられた。

「"賢くない生き物は嫌いだ"といったはずだ。
私の力へ目を向ける前に少しは自分の能力を知ったらどうだ?」

 ギラリと輝く大鎌を首にあてられ、ツゥと流れた一筋の鮮血。たったそれだけの出血にも関わらず、ティーダは軽い眩暈を覚えて顔をしかめる。

「……なん、だ……これっ……」

 二重にも三重にも見える<冥王>の冷たい微笑が死神さながらの不気味さを漂わせる。

「少しは味わえたようだな? "<冥王>の力が特殊能力"だからといって戦闘に向いていないとでも思ったか?」

 焦点の定まらぬ紅の瞳と唇が何か言いたげに動くと、マダラは面倒くさそうにティーダの片足を掴んでズルズルと引きずって歩き始めた。

「本当に馬鹿だな。心が読める相手に無理にしゃべりかけるな。貴様の並外れた生命力ならば七日ほどで立ち上がれるようになるだろう」

「……な、慣れてねぇんだよ……」

「…………」

(ここ数代で劇的にヴァンパイアの王の本能が弱まり続けている……
原因は強すぎる悠久の王と精霊王のせいか……? それとも……)

 後者にくだらない仮説を立てたマダラは"馬鹿馬鹿しい……"と頭を振った――。
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