ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
社長と秘書

上司からの身上書

ビルの最上階で仕事を始めて1年半くらい経った頃、一通の白い封筒を社長室の奥に座る人から差し出された。


「読んでおいて」

「はい」


何だろう?と思いながら秘書室へと戻り封を開ける。

白い封筒の中身は便箋。
コピー用紙じゃなく、きちんと和紙で作られたもの。

三つ折りに畳まれた紙を開き、文字の上下を確かめてから目で追った。



『身上書』


縦書きで始まった文字の意味を考えず、ただ漠然と首を傾げる。


「身上書……って何?」


履歴書みたいなもんだというのは、中身を読み始めてわかった。

氏名、生年月日、年齢、性別、学歴と仕事上での役職等が、丁寧な楷書で書き綴られてある。

そんなの今更教えてくれなくてもいいし、ホームページを開けば幾らでもわかるのに…と思いながら二枚目の紙を読んで絶叫した。



「な…何これぇぇ!?」


ガタン!と椅子を倒して立ち上がったものだから、同じ秘書室にいた先輩秘書の宇田川(うたがわ)さんは……


「わっ!!」


ビクン!と肩を上げた拍子に、危うく新聞の記事を切り損ねそうになったとこぼす。


「す、すみません……」


力の抜けたように座り直し、もう一度目を凝らして文面を読み直した。


秘書課に配属されて1年と半年目の私。
ようやく取引先の社員や社長さんの顔を間違えずに覚えられるようになった。


< 68 / 191 >

この作品をシェア

pagetop