意地悪な片思い

遠い彼の背中


 ちらりとその席をのぞく。

あ、出勤してる。


遠目でパソコンに向き合う、彼の後ろ姿を私は視界にいれた。

数日たってようやく自然に見始ることができた私。見ていたことを速水さんに指摘された私は、意地とばかりに不自然なほど彼を見なかった。

出勤しているのかしていないのかそれすらもわからないほどに、とにかく彼の姿を私は見なかった。


それが功を奏したのかどうなのかわからないけれど、
彼とは今では全く目が合わない。

でもこれで、仕事集中できる…よね。


「市田。」

「はい!」
 顔をぐるりと回転させ、声をかけてきた主である長嶋さんの方を見ながら私は席を立った。

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