クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
告白と攻防


激しく雨が窓を叩きつけている。

時計を見ると、もうすぐ午後八時になろうとしていた。

私は、業務部の自分のパソコンに向かい、データ入力に追われていた。

実は、笹倉さんの子供さんが保育園で熱を出したと連絡があり、彼女が急きょ、お迎えのために早退することになった。いつも、お世話になってるし、私が彼女の分の仕事を買ってでたんだけど、その量が思ったより、多かった。

いつもこんな量、こなしてるの……?笹倉さんって、やっぱり仕事出来る人だったんだな……。

部長や上の人達は、前々から接待が入ってるとかで、早々と退社していったし、金曜日ということで早く帰りたい人も多く、新入社員同然の私が、「これ、お願いします」と、周りに頼める空気でもなく……気付けば、フロアで残っているのは、私だけになっていた。


はぁ、と資料の束を見て、大きくため息をついていると、

「まだいたんですか?」

と、急に背後から声を掛けられ、飛び上がりそうになった。

ハッと振り返ると、そこに小野原課長が立っていた。

「こんな時間まで何を?もうほとんど帰りましたよ」

「いえ、思ったより、量が多くて……」

要領の悪いヤツ、って思われてるんだろうな。でも、仕方ない。自分で申し出たことだ。

すると、課長は、私の横の席に座ると、そこのパソコンの電源を入れた。

「残ってる分、貸しなさい」

「え?」

……もしかして、手伝ってくれるの?

「え?じゃない。見たら分かるでしょう。このやり取り自体が時間の無駄です。早く」

低い声で言われ、私は「は、はいっ」と命令に従った。

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