自分の悲鳴で、パチッと目を開けた。

「……あれ……?」

いつもの見慣れた天井。

……私の部屋だ。ちゃんと部屋着も着ている。

カーテンの隙間から陽の光がこぼれていて、とっくに朝が訪れていることを示していた。


夢……か……。


ホッとするのと同時に、顔と体が熱くなる。

何て、リアルな夢……。

きっとあんなキスしたからだ。これじゃ、欲求不満みたいじゃない……。

ああ、ホント、恥ずかしい……。




昨日は、あれから水族館に行って、食事をして、帰ってきた。

もちろん、それ以外、何も無かった。

楽しかったり、暗い気持ちになったり、泣いたり、ホッとしたり、昨日は感情のオンパレードだったから、帰ってきたらどっと疲れて、シャワーを浴びたら、すぐ寝てしまったんだっけ……。

その時、携帯が鳴った。

一瞬、小野原さんかと思ってドキッとしたけど、スマホの画面を見ると、母からだった。

「……もしもし、朝早くから何?」

『朝早く、ってもう十時よ』

「え?」

時計を見ると、母の言った通りだった。

『何、まだ寝てたの?』

「うん……まぁ」

『もう、そんなんじゃ、婚期逃すわよ』

……いや、それは関係ないでしょ。

『それより、香奈、谷山のおじさん、覚えてる?』

「え……?」

谷山……タニヤマ……あっ……。

「もしかして、トモくんのお父さん?」

我が家と谷山家は、父親同士が古くからの友人で、昔は家族ぐるみの付き合いをしていた。

トモくん、というのは谷山家の長男で、谷山智之(ともゆき)のこと。私より一歳下で、小学生の頃は、うちの妹弟達も一緒になって、よく遊んでいた。中学生になると、段々会う機会も減ってきて、ここ十数年間は全く会っていないけど、親同士は今も電話やら年賀状やらで連絡を取り合っているのは知っている。

『そう。智之くんのお父さんよ。何か、最近、具合が悪いみたいで、病院で検査してもらって今は自宅療養してるみたいなの』

「そうだったんだ……」

『香奈 、今度の土曜日、お見舞いに行ってくれない?』

「えっ?私?お父さんとお母さんは?」

『お父さんはこの前から体の調子崩しちゃって。お母さん、お父さんを一人にしておけないでしょ?』

こないだのぎっくり腰から、今度は体調不良になってるなんて……。

「恵美か潤はどうなの?」

『恵美は仕事が入ってて、潤は大学の勉強で忙しいんですって。香奈、あなた土日は暇なんでしょ?』