どん底女と救世主。
広まる噂。




「聞いた?営業一課の深山課長のこと」

「聞いた聞いた。彼女がいる説急浮上ってやつでしょ?」

「連日彼女の手作りだと思われるお弁当を持ってきてるって。一緒に住んでるのかな」

「仕事一筋で女には興味ないのかと思ってた。ショックー、私狙ってたのに」


いやどっちにしろ私たちには無理無理、と笑う女子社員たちの声が社員食堂に響く。


深山課長に最初にお弁当を作ったあの日、帰る頃にはもうこの手の噂が社員の間に広まってしまっていた。


至るところで聞こえてくる課長の噂話。

彼女についての憶測も飛び交っていて、社内の人間なんじゃないかと勘ぐる社員もあとを絶たない。


名古屋に異動になる前も、女の人に人気はあったけど、彼女の話なんて聞いたことなかった。

告白されても振ってばかりで、浮いた話なんていままでなかった深山課長が、突然、女の存在を匂わせ始め社内はその話一色だ。


課長、どれだけ人気者なんですか。


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