どん底女と救世主。
鬼上司にも縋る思いで。




ダクダクのはんぺんを箸でつまむと、八丁味噌特有の甘さが特徴だという名古屋ゆかりのおでんの味噌ダレが滴る。


隣で、別に自分が作った訳でもないのにどこか得意げな顔をしているのは、驚くなかれ。


なんと、深山主任だ。


私は今、主任とふたりで会社から少し離れたところにある味噌おでんが美味しいというお店に来ている。


主任は東京出身のバリバリの江戸っ子だが、名古屋で初めて食べた味噌おでんにすっかりはまってしまったらしく。


東京に帰ってもこのおでんが食べたかった主任は、名古屋営業所での部下にここのお店を教えてもらったらしい。


鶏ガラで出汁を取るのが常識の地方出身である私からしたら、おでんに味噌なんて邪道と思っていたけど。



…美味しい。


口に含んだはんぺんは、熱々で火傷しそうだけど、味噌ダレが染み込んでいてクセになりそうな味だ。



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