どん底女と救世主。



絵理の存在のありがたさを改めて感じていると、そういえば、と絵理が今までとは違う少しテンションが上がった声を出す。


「深山さん、帰って来たんだね」

「えっ!」

「えっ、てあんた同じ課でしょう?」


何驚いてるの、と怪訝な表情の絵理を前に白ご飯が喉につかえかける。


どこに住んでるかの話から、深山課長の話なんて驚くに決まってる。

まさか、ばれてるとかじゃないよね?

背筋が少しひやりとするのを感じながら、絵理の次の言葉を待っていると、絵理はひとりで納得したような顔で話し始める。


「あ!実は、帰って来て欲しくなかったんでしょう?あんた、かなり扱かれてたからね」

「そ、そうそう!もう昔を思い出して、今でもびくびくしちゃってるよ」

「まあ、深山課長が指導係だった咲は本当に厳しくされてたからね。管巻かれて私が大変だった」

「あはは」


どうやら、絵理は別に課長との生活のことを知っているわけではないらしい。

口が裂けても深山課長の家にお世話になってるなんて言えないな。

絵理、卒倒しちゃうかも。


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