年下男子とリビドーと
恋愛も仕事も先行き不透明

案の定、紘希から風邪を貰ってしまった。
まぁ風邪くらいすぐ治る、と高を括っていたら、数日後咳が出て来た。
仕事へ出掛ける前に部屋を漁ったが、マスクが切れていた。
買いに行くかどうか……思案していると、成海くんの顔が浮かんだ。
そうだ、成海くんは大事な就活生だ、伝染してはいけない。
わたしは出社前に薬局に寄った。

「冴木さん、風邪ですかぁ?」

出社早々、皆に声を掛けられてしまった。
それもそのはず、6月にマスクはなかなかに目立つ。

咳にマスクで息が苦しいが、仕事に影響は出すまいと、PCのスイッチを入れると同時に仕事スイッチを入れる。
手持ち依頼が数件、一度深呼吸してから、集中して取り組んだ。
この仕事は、電話口でお待たせしているお客様もいるため、早く回答を返さねばならず、時間に追われている。
だからこそセンターでは「時間を掛けても確実に!」をモットーにしており、日々社員さん達は声を大にして周知している。
急がず確実に間違いのない仕事をする、それは当たり前だが、わたしは自分の中で更に、素早く丁寧に、という目標を掲げている。
確実で間違いがなく早い、やはりそれが一番ではないかと考えている。
自分なりに確認ポイントを作り、重要な部分は絶対に見落としがないよう、気を配っているつもりだ。

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