冷徹社長の秘密〜彼が社長を脱いだなら〜
捻挫のシンデレラ
「お先に失礼します」


店長の三宅さんに声を掛け、ショップを後にする。ウインドウに映る自分を見ると、にやけ顔が隠しきれていないのが、丸わかり。


それもそのはず。今日の私は左手に『ジョルフェム』の紙袋。


ジョルフェムは大手バッグブランドで、雑誌でも特集を組まれていた。特に、二十代をターゲットにしていて、流行のアーティストなども起用している。


値段も他ブランドよりは手にしやすいということで大学生の三人に一人がジョルフェムのバッグを使っているという人気ぶり。


私、桜木深月(さくらぎみづき)は、そのジョルフェムでショップ店員として働いていた。


ジョルフェムで働きたい。高校の頃から憧れていたブランドで雑誌の特集の時は毎回二冊買っていたそれくらい大好き。その気持ちだけで、一年前、大学卒業後すぐに、上京してきた。


新卒とはいえ、最初は準社員からのスタートで、なかなかうまくいかないことも多かった。お客様を怒らせたことも、店長に怒鳴られた日もあった。


本当に挫折の連続で、やっぱり向いていないのかもしれない。そう思ったことも何度もあって悩みに悩んだ一年だった。


それでも大好きなジョルフェムのバッグに囲まれる仕事を手放したくない。そんな思いで今日まで頑張って続けて来た。


そして、その努力もあり、今日、働き始めて丸一年。無事、正社員になれた。やっと自分の頑張りが認められたみたいで本当に嬉しかったし、涙が止まらなかった。
< 1 / 152 >

この作品をシェア

pagetop