冷徹社長の秘密〜彼が社長を脱いだなら〜
忍び寄る魔の手
朝、目が覚めると隣で一緒に眠っていたはずの諒の姿はなかった。朝、早くに出発すると言っていたけれど、起こしてくれてもよかったのに。

「しばらく、帰ってこないのか」

ここに来て、すれ違い生活もあったけれど、諒がいないなんて初めてでやっぱりちょっと寂しい。この一ヶ月、私にとってこんなにも濃い一ヶ月はなかったと思う。

そんな思い出に浸りつつも思い出すのは昨夜のことばかり。キュッとネックレスの赤いハートを握るとドキドキが蘇って来た。

『・・・だったら、そろそろいいですよね?』

昨夜の私は、少しいつもよりも積極的だった。見たこともないほど赤面した諒を見たからか、少しだけ優位に立ったつもりでいた。だからかいつまでも進まないこのじれったい関係をそろそろ次のステップへと進めたかった。

『随分と煽るな?どういう意味かわかっているんだろうな?』

『当たり前じゃないですか!私だって一応二十歳を超えた大人だって言いましたよね?』

『キス、めちゃくちゃな下手なくせに。経験ないんだろ?』
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