もしも、もしも、ね。

*3*



「捻挫ね。」



薬品の匂いが充満する、白い保健室。

優しい口調におばあちゃんのような雰囲気、眼鏡。

という偏見かも知れないけど“典型的”な保健室の先生はにっこりとそう言った。

さっきまで痛がって涙を浮かべてたアユというクラスメートもなんとか落ち着いている。



「望果、どうしよう。」

「ん?」

「私、午後の部に二人三脚あるのに・・・。」



“アユ”が困ったように顔を伏せた。

すると、望果も「あら」と顔をしかめる。

が、それも一瞬のことで。

私を見るとニッと口角を上げた。



「大丈夫だよ、アユ。」



まさか。



「暁里が代わりやってくれるから。」

「桜野さんが・・・?」



おい。

おいおいおい。

まさか、これはさっきの「勝とうね」約束続編か!?


冷や汗を流していると、望果が「やってくれるよね?」と私に近づいてきた。

そして


「クラスに貢献できるチャンスが増えるじゃない。」



とハートマークが付きそうな口調で耳元に囁いた。

が、なぜか悪寒が走る私。



「ね?やってくれるよね?あーかーり?」

「う・・・う、ん・・・?」



渋々飲み込む。

すると、望果の笑みがいっそう深くなった。


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