クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ
仮面生活は恋のはじまり



 どちらかというと、地味を選んできた。
 でも、それは本意ではない。


 できるだけ目立たぬように。
 何事もなく、平穏無事に毎日が過ぎ去ってくれるように。


 それを叶えるために、選んだだけ。





「もうちょっと、こっち」

 白地に紺の浴衣は、お世辞にもおしゃれとは言えないけれど、雰囲気を盛り上げるにはこれ以上のものはない。


「あのっ」

 戸惑いを口にすれば、腰に回った手で強制的に引かれ、声を出さぬようにともう一方の人差し指で制された。



 どうして、こんなことになっているのか。
 山間の秘湯へ社員旅行に来ただけなのに……



 態度とは裏腹の

 少しも威圧の無い優しいくちづけは


 禁断の社内恋愛のはじまりの合図。



< 1 / 361 >

この作品をシェア

pagetop