肉食系御曹司の餌食になりました

麻宮はそう答えて、今度はブロッコリーを口に運ぶ。

野菜は嫌いではないが、いくら食べても腹に溜まらず満腹感や満足感が得られ難い……という本心までは明かさない。

彼女の言う通り、肉中心の食事に問題があることを理解しており、食生活も変えていかなければと考えるこの頃だった。


食事の後はキッチンに並んで立ち、一緒に食器を洗って片付ける。

何気ない日常のひとコマが輝いて見えるのは、隣に愛しい恋人がいてくれるお陰。

麻宮は穏やかな幸せを味わいつつ、彼女が『それじゃ私は帰りますね』と言ったときの寂しさを思い出していた。


休日はこの部屋で生活してくれる彼女でも、平日は自宅に帰ることが多い。

同棲を求めても断られるのには、彼女なりの理由があってのこと。

それは、来年の三月に東京への引越しと入籍が決まっているのだから、一緒に住むのはそれからでもいいでしょうということだ。


『短期間で二度も引越すなんて面倒ですし、婚約していても、まだ独身です。入籍まではひとりの時間も楽しみましょう。お互いに』


そう言われたとき、麻宮の心に不安が翳った。

愛の重さが釣り合っていないのか、はたまた、そんなドライな発言も彼女らしいと言うべきか。

入籍までのひとりの時間も楽しみたいという彼女に対し麻宮は、入籍までに逃げられると困るという思いがあるため、同棲を強要できずにいた。

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