王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
第五章 想望の王子




■1■


バルバーニ兵に扮したエドワードは、とても心許ない格好をしているラナに、自分が着てきた黒いマントを貸してやった。

特別高価なものでもないし、隊商と共に逃げ出した彼女が道中調達していたとしても不自然ではないような代物だ。

ラナはひどく寒そうに見えたし、エドワードは彼女の白い肌をこれ以上他の男には見せたくなかった。


「あ、そういえば」


肩にマントをかけたラナが、ふと思い出したように呟く。

そして白いレースの胸元をぐいっと引っ張り、大きく広げたそこに手を突っ込んでゴソゴソと中を探るので、エドワードはギョッとしてラナの腰を攫い、無防備な彼女が部下たちの目に触れぬよう自分の身体で隠した。


「お前って奴は、いったいなにを……」

「これを、殿下にお渡ししなくてはと思っていたのです。一緒に拾った銀貨は使ってしまったのですけれど、なにかお役に立つかしら」


ラナがそこから取り出してエドワードに手渡したのは、皇城内の船着場で拾った何枚かの書類だ。

彼はそれを受け取り、サッと目を通すと、びっくりしてライアンを振り返る。


「おい、これを見ろ」


ライアンとロロもその紙を覗き込み、呆気にとられて目を丸める。


「お、王女殿下、これをどこで……?」


たまげた顔のロロに訊ねられて、ラナは多少臆して答えた。


「岬の陰の船着場よ。逃げてくる途中に、アルベルト皇帝が海賊船と取引をしているのを目撃したの。彼がそれを落としていったから、一応拾ってみたのだけれど」
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