クールな公爵様のゆゆしき恋情

驚きの知らせ

アンテス領へ戻り湖のお屋敷で暮らし始めてから半年が経ちました。

少しずつ手を入れた庭には、美しい花々が咲いています。

赤、橙、黄色。比較的丈夫な種類の花の苗を取り寄せて、お屋敷で働く皆さんに手伝って貰いながら植えていきました。

湖への道中を沢山の花で飾るのはまだ時間がかかりそうですが、それでも十分満足な出来栄えです。

時々遊びに来る妹のグレーテも、色鮮やかなお屋敷の中庭をとても喜んでくれています。


刺繍の仕事も軌道に乗り始めました。と言ってもまだ自立出来る様な収入を得られている訳では有りませんが。

刺繍の仕事にアンテス辺境伯の娘といった肩書きは使えませんから、コツコツと仕事をこなして信用を得ていくしかないと思います。


それでも毎日がとても楽しいです。好きな事をして過ごして、周りは優しい人ばかりで、この頃は王都での事を思い出す事もほとんど無くなりました。



今日も庭に出てお花の手入れです。
新しい苗も手に入れたので、早く植えなければいけません。

つばの広い帽子をしっかりと被ると、私は中庭に出て作業を始めました。

帽子が少し邪魔に感じますが、今以上日焼けはするなとお母様から厳命されているので仕方がありません。

お母様は私の結婚をまだ諦めていないらしく、いろいろな伝手を使いお相手を探しているようです。
でもこの半年間に、王子と婚約解消したと私と結婚しても良いと言う奇特な方は現れませんでした。

おかげで私はのんびりと暮らしていられるのですが。


ここに居ると王都の様子は分かりません。
調べる事は可能でしょうが、私はあえて自分から知ろうとはしませんでした。
私達の婚約解消がいつ発表されたのか、アレクセイ様が今どうしているのかも。

最後に会った夜会の時の様子を思えば、公爵令嬢のデリア様と新たに婚約されたのかもしれません。でも、それを知ってしまったら心が乱れてしまいそうなので、誰にも聞く気にはならなかったのです。


そんな風に日々を過ごしている内にあっと言う間に月日は過ぎていきました。
あと一月後には遂にお兄様とエステルの結婚式です。

二人はまずは王都で結婚式を挙げ、その後、アンテスのお城で結婚のお祝いをするそうです。

私は王都での式には参加しませんが、アンテス城での宴では、二人に精一杯のお祝いをしたいと思っています。

< 45 / 196 >

この作品をシェア

pagetop