クールな公爵様のゆゆしき恋情

過去の想い出


「ラウラお嬢様。あの山の向こうのそのずっと先に、アンテスのお城が有るそうですよ」

侍女のアンネにそう聞いてから、私は毎日山がよく見えるこの場所《お屋敷の裏庭を出た先の小高い丘》で過ごしています。

アンテスのお城にはお父様とお兄様がいらっしゃいます。
お母様は私と一緒にお屋敷にいますけど、お体の調子が悪くて私と会う事が出来ないそうです。

アンテスのお城に居た時はいつも家族一緒に居られてとても幸せでした。
それなのに今は誰も居ません。独りぼっちです。
私は悲しくてお城の方を眺めてはポロポロと涙を零していました。

山の向こうに沈む夕日はとても綺麗です。紫とオレンジが混ざった不思議な空の色。

お父様とお兄様もこの夕日を見ているのでしょうか。お母様は見れませんね。ご病気でベッドから出られないのですから。

独りで綺麗な景色を見ても笑顔になれません。

お父様とお兄様のいるアンテスにお母様と一緒に帰りたい。寂しくて悲しくて心に穴が開いてしまったみたいです。


新しい涙が浮かびそうになった時、元気な男の子の声が聞こえて来ました。

「ラウラ! またここに居たのか」

振り返ると私より少しだけ背の高い男の子が勢い良く走って来ます。

いつも綺麗だなって思う黄金色の髪が今日は夕日を浴びてオレンジ色に輝いていました。
< 8 / 196 >

この作品をシェア

pagetop