ムーンライト・テンプテーション ~つきあかりに誘われて~ 
番外編:俺のカミさん (望月光視点)
初めて明里に会ったのは、あいつが「いまむらホーム」に入社した3年前。
あいつを見たとき、「ちっちぇえな。まるでガキみたいなやつ」と最初に思った。
しかも年は22と聞いた時点で、恋愛対象としてはもちろん、抱く対象としても全然見てなかった。
年齢(とし)云々以前に、職場の女には手を出さねえ方がいい。
それが過去の経験を通して得た俺の教訓だ。
ま、俺がそう思っていたのと同様に、明里も俺のことを恋愛対象という目では見てなかっただろうしな。

明里と俺は同じ職場に勤めていたが、あいつは営業事務という内勤、対して俺は、職場にいるより現場に行ってることが多かった大工。
だから職場内でも、ごくたまに程度しか会うことはなかった。
しかしあいつは、職場内で俺と会えば、いつも元気よく挨拶し、ちょっとした会話を2・3してくれた。
そこには水ヤの女みたいな媚も、彼女みたいな甘ったるさもなかった。
あったのは、一同僚としての気遣い、それだけ。

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