箱庭センチメンタル

侵入者の金髪少年





———————



習字の時間。



緊張にも似た、けれど確かに違う、言いようのない不快感。


ぐるぐると渦巻くそれはせり上がり、“感情”となって今にも外に現れてしまいそうだ。


不可能だ。あり得ない。


あるわけが無いと分かっていながら、居心地の悪さを空間全土に感じていた。



正面にはお祖母様。


習慣のように、決まった時のみ姿を現すけれど、この時間のみ常に同伴して私の側に付く。



筆を握る手が、汗ばむ。


自分では止められない。


焦りなどない。普段通りにやればいいだけだ。


けれど、私の動向を伺う視線に思考が萎縮されてゆく。



どれだけ回を重ねようとも、この時間だけは一生慣れることはないだろう。




「どうしました、雛李さん。ペースが落ちていますよ」


「…申し訳ございません」



どうにも、雑念が多すぎる。



< 20 / 134 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop