箱庭センチメンタル
「お前のためなら、俺は何だってできる。
だから、俺を求めて」
だから私は、信じたい。
彼の言葉ごと、信じてみたいのだ。
「なぜ貴方は、そこまで……」
おかしい、と思いながらも、続く言葉を私は予感していた。
にっこり笑って彼は言う。
「諦めたくないから」
驚くほどに真っ直ぐで、淀みがない。
疑心を抱く隙間など存在しない。
「一緒に逃げよう、雛李」
差し伸べられた手。
力強い声、導いてくれる。
普段の私には、届かないだろう声。
気休め程度、不安さえ煽るだろう声に、安心さえ覚えてしまうのだ。
気付けば私は惹かれるように、差し出された手を取っていた。