夜の甘やかな野望
4.


     *


名前を耳元で囁かれて、つややかに光る琥珀色の瞳ののぞきこまれる。


体の熱と同じように、熱いまなざし。


溶ける。


いつも、少し突っ張っている性格。


男に対して可愛げも、媚も見せず、一人でも充実していますっていうフリ。


それが全部溶けて、甘えて、すがる。


いや、この男はわかっていて、あえて崩してくるのだ。


楽しみながら。


甘く耳元で囁いて、弱いところを攻めたてて、とことん鳴かされる。


熱っぽく見つめながら、笑っている瞳がその証拠だ。


崩される恐怖を通り越すと、素の自分をさらすのが快感でしかない。


この男にいいようにいたぶられるのが、気持ちが良くてしかたがない。


だから彼女たちは“お友達”でも、甘んじているのか。


そして、この男は寄ってくる女を誰でも“お友達”にしているわけではないのだ。


選んでいるのだ。
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