傷痕~想い出に変わるまで~
困惑
光と会った日の翌日、土曜日。

休日出勤なので平日より少しゆっくり出社した。

二課のオフィスに向かう前に自販機でコーヒーを買って喫煙室に足を運び、椅子に座ってタバコに火をつけ、ぼんやりと煙を眺めながらコーヒーを飲んだ。

夕べから光の言葉が頭をぐるぐる回って離れない。


“今更過ぎることも自分勝手なこともわかってる。でも俺はやっぱり瑞希が好きなんだ”


確かに今更だ。

もしあの時光が、私の代わりを探すより“もっと俺を見て”とか“俺を必要として”と私本人に言ってくれていたら…私は光の寂しさに気付けたのかな。

仕事はもちろん大切だけど何より大切なのは光だと、まっすぐな気持ちで言えたかな。

もう終わりにしようと思っていたはずなのに今となってはどうしようもないことばかり考えて、今の光と一緒にいたいのか、自分がどうしたいのかがわからない。

大きなため息をついてコーヒーのカップに口を付けようとすると、ドアが開いて少し眠そうな門倉が火のついていないタバコを口にくわえながら室内に入ってきた。

「おはよう。」

「おはようさん。」

門倉は私の隣に座ってくわえたタバコにオイルライターで火をつけ、あくびを噛み殺した。

「寝不足?」

「あー…ちょっとな…。」

門倉が少し顔を近付けて私の目を覗き込んだ。

その距離があまりに近いのでドキッとして思わず背を反らせた。

「な…何?」

ち…近いよ!!近すぎるから!


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