傷痕~想い出に変わるまで~
動揺
翌日。

いつもの居酒屋で、さっきから門倉はオイルライターの蓋を何度も何度も開け閉めしている。

いい加減カチャカチャうるさい。

「あのさ…それ、やめてくれる?うるさいんだけど。」

「あ…悪い。」

門倉はライターの蓋を閉めてテーブルの上に置いた。

やっと静かになった。

私はため息をついてジョッキのビールを飲み干した。




今日の昼休み。

昼休みになるや否や私は一課のオフィスに飛び込み、まっすぐに門倉の席へ向かった。

そして長身の門倉のサイズにピッタリな長いネクタイを思いきり引っ張った。

一課のみんなは驚いた顔をして呆然と私を眺めた。

「アンタ、私に恨みでもあるの?」

門倉は驚いた様子で目を丸くした後、私の額をボールペンでピシッと叩いた。

「落ち着けよ。みんなビックリしてる。」

「ビックリしたのは私よ!なんであんな……!!」

興奮して目を血走らせている私を抱えるようにして、門倉はオフィスの外へと私を連れ出した。

会社の敷地内の花壇の前に備えられたベンチに私を座らせ、門倉もその隣に座った。

「昨日何があった?」

涼しい顔しやがって、ホントムカつく。

あまりにも腹が立って門倉の襟首を掴んだ。

「“何があった?”じゃないよ!なんで勝手に光と引き合わせたりするの?!私の気も知らないで…!!」

「知ってるよ。お前の元旦那に対する気持ちならきっと俺が一番よく知ってる。」

「だったらなんで…!!」

更に力を込めて掴みかかる私を、門倉はギュッと抱きしめた。

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