「……ありがとう」

 小さくお礼を告げると、直人が私の手に触れた。

「ま、わざわざ迎えに来た甲斐があったよ。こんなに可愛い晶子が見られたことだし」

 さらっと告げられ、先ほどとは違う、素の直人の感想に私の心臓は壊れそうだった。絶対に顔も真っ赤になっている気がするが、今は夜だし、アルコールも入っているから気づかれないだろう。

 嬉しい。コンタクトにして、髪形も変えて、今日は服装も張り切ったから、お世辞もあっただろうが、沢山の賛辞をもらえた。

 でも、直人の言葉がなによりも嬉しい。頑張って着飾った甲斐がある。すごい、今まで誰かのために自分を変えたいとか、なにかを頑張るなんてことはほとんどなかったから。

「直人は、ご飯食べた?」

 そこで、ふと気になったことを口にする。仕事を切り上げて来てくれたということは、そんな暇はなかったのではないだろうか。案の定、直人は曖昧な返事をしてきた。なので、図々しいお願いをひとつしてみることにする。

「私、お酒もあまり飲んでないけど、友達と喋るのに夢中で、あまり食てなくて。だから、お腹空いちゃったんだけど」

 そう言うと直人は意外そうな顔をしてから笑ってくれた。ホテルで見せた社長代理としての笑顔も素敵だと思うけど、やっぱりこっちの直人の方がいい。いつもの宝木直人の顔だった。

「なら、どこか飯でも食っていくか。せっかく綺麗にしているんだから、もう少しだけ堪能させてもらう」

 私は照れながらも、嬉しくて素直に頷いた。すると直人はやっぱりおかしそうに笑ってくれた。その笑顔に胸が締めつけられる。できればずっとこうして隣で見ていたいと思った。それを願ってもかまわないんだろうか。