今日は直人が帰ってくる日で、仕事を終えたのに気持ちはずっしりと重い。マスコミの取材もそこまで心配されるものでもなく、もうマンションに戻っても平気だろう、と栗林さんから伝えられ、長かったホテル生活にも終止符を打つことになった。あんなに戻りたかったマンションなのに、素直に喜べない。

 あれから直人は、何回か電話をくれたのだが、私は取ることができなかった。あんな態度をとって、きっと心配させたかもしれない。さらに電話にも出ないなんて最悪だ。

 直人だって忙しいのに、なんでこうして私はいつも、彼に心配や迷惑をかけてばかりなのか。このまま逃げていてもしょうがないのに。ちゃんと今後のことについて話さなくては、と思っているのに。

 そう思っているくせに、ここにきて私は、やっぱり悪あがきをしてしまった。電話をとらなかったおかげで、直人が何時に帰ってくるのかは分からない。それでも顔を合わせるのが怖くて、私は同僚たちの誘いで久々に飲みにいくことにしたのだ。

「でも三日月さん、コンタクトやめちゃうなんて勿体ないですよ」

「そうそう眼鏡が悪い、ってわけでもないけど、似合ってたのに」

「やっぱり目に合わなくて」

 私は苦笑しながら答えた。就業時間を終えて、共にエントランスに向かう途中で、同僚たちから正直な感想が漏らされる。

 私はあの日からコンタクトをやめた。ない方が魅力的だ、と直人が言ってくれたのが嬉しかったけど、それに反発する気持ちもあった。

 それに、どんなに着飾って頑張っても、私は朋子には敵わない。私は三日月晶子なのだ。