自分が自分ではないみたいで怖い。この押し寄せてくる感覚はなんなのか。涙腺が緩みそうになったところで、直人が顔を上げて目線を合わせてくれた。

「怖いか?」

 まるで子どもに尋ねるような口調。おかげで私は素直に頷いていいものか迷った。怖くないといえば嘘だけど、それは嫌だからというわけではない。

 返事をせずに葛藤していると、それを見抜いてか、彼の表情が少し和らいだ。そして、ぎゅっと抱きしめられる。

 肌と肌とが触れ合って、緊張しながらもそれは自分が思う以上の心地よさだった。直に触れる人肌はこんなにも安心感を与えてくれる、けれど、これは全部、相手が直人だからなのだ。

「好きだよ」

 さらっと耳元で紡がれた言葉に、私は目を丸くする。直人の顔を見れば、薄明かりの中、微笑んでいた。

「晶子を見てると自然と言いたくなる」

 意識せずとも、耳まで熱くなった。直人は絶対に作ってるよりも、こうして素の方が破壊力があると思う。このタイミングで、ずるいんじゃなかろうか。

 髪を撫でられ、ほっと落ち着いて油断していると、露になっていた耳に舌が這わされ再び私は声をあげた。恨めしく直人を見ると、額に優しく口づけてくれる。

 瞼、頬、とキスの雨が降ってきて、私もそれをおとなしく受け入れた。そして唇にキスを落としてくれてから、彼が不安そうに、続けても? と聞いてきた。

 なんだか、さっきと立場が逆転したみたいで私はつい笑みをこぼしてしまう。答えは決まっている。答えは口に出さず、私から直人に口づけた。