「お見舞いの品、本当になくてもいいの?」

「かまわない。俺たちが持っていかなくても、処理に困るくらい貰ってるだろ」

 早足で社長の病室に向かいながら、私はあれこれと直人に尋ねていた。はじめてここに来たとき以上に緊張している自覚はある。ここに来るまでが、必死すぎて今になって心臓が痛くなってきた。

「それにしても、無理してコンタクトにしなくていいんだぞ」

 遠慮がちに口を開いた彼に、私は目を丸くする。今日、私は再びコンタクトをつけていた。前回、お見舞いに行った際に社長に祖母の面影を求められたことも、もちろんある。でも、それだけではなくて

「いいの。直人がこっちの方がいいって言ってくれるなら……」

 彼の方を見ずに私は小声で答えた。昨日はつい意地になってしまって眼鏡にしていたけれど、元々眼鏡に執着があるわけでも、コンタクトに抵抗があるわけでもない。

 それなら、直人が素直にいいと言ってくれる方がいい。少しでも可愛いと思ってもらえるなら私だって嬉しい。それは照れくさくて言わないけど。

 しかし、直人は勝手に色々と悟ったのか、なんだか嬉しそうな顔をして私の頭を撫でてくれた。ああ、もう。そういう優しい笑い方は反則だ。胸をときめかせながら、とりあえず目的地に足を進める。

 もう少し心の準備をして、余裕を持ってやってくるはずだったのに。心の中で、自分を責めつつ、私は今朝のことを思い出した。