今更ながら自分の発言や行動、彼に言われたことや、されたことを思い出して恥ずかしくなってくる。心臓がバクバクと音を立てて、しばらく立ち上がれそうもない。

 掴まれていた箇所をさすってみると、なんだか、そこだけまだ熱い気がする。なんとも情けない話だ。三日月今日子の孫として、精一杯の仮面はかぶれていただろうか。

 私の出したの条件は、彼にとっては馬鹿げていただろう。恋愛ごっこ、と言われたことを思い出す。そのとおりかもしれない。結婚したとしても宝木さんはきっと、ずっとあの調子だ。

 でも祖母の言うとおり、相手に変わるのを望むのは難しいが、自分を変えることならきっとできる。

 だから、もし結婚するなら、前向きに考えたい。愛してほしいとか、好きになってほしいとか、そんなことは言わないし、言ってもどうにもならない。

 けれど、この結婚をきっかけに、私自身が一度くらい、誰かを思いっきり好きになってみたっていいじゃないか。その相手があの宝木さんだというのは、なんとも不安ではあるが。

『いい、晶子? もしもあなたと結婚したいって男性が現れたら、あなたがその人のことを、心の底から好きになれるなら結婚しなさい』

 どうやって心の底から誰かを好きになるのかなんて分からない。そんな風に私に言ってくれた祖母は、なにもかもを見越したような穏やかな笑みを浮かべていた。

 だから思い出せたのだ。私は妹と違って、人に自慢できるようなことは、これといってないけれど、ただひとつ自信をもてることがある。

 それは、どんなことでも受け入れて、前向きに考えることができることだ。辛いことや悲しいことがあっても、前を向ける。祖母から受け継いだ大事な教えだ。

 こんな条件を出して結婚しようとしている私を、天国の祖母どう思っているんだろうか。