願いが叶ったその時…
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    side百合




目を開けると私は桜の木の下にいた。

そういえば、父は桜が好きだったな…
いつも微笑みながら、
懐かしむように、桜の木を触っていた


でも、私は嫌いだ…
その色も香りも…春という季節さえも



?『百合』


「っ」



私が後ろを向くと笑顔で両手を広げている
父の姿があった。



また、この夢だ…



私が立ち尽くしていると
隣を誰かが走り抜けていった。
私と同じ水色の髪に父と同じ…黄緑色の目…
あれは…私だ



『お父さーん!また桜見てたの?』


父『あぁ…とても綺麗だろ?』


『うん!』



なんて無邪気なんだろう
未来も何も知らない女の子…
もし、未来がわかっていたら、何か変わったかな



父『百合、笑っていれば必ずいい事がある』



次の瞬間、目の前で父は撃たれ
その場は血の海になっていた。
何か出来ることもあったかもしれないのに
私はただ黙ってそれを見ていることしか
できなかった。



    

「っ…ハァ、ハァ、ハァ」



なんで…こんな夢を見なきゃならない
思い出したくないのに…
もう、あの人に縛られたくない…



「クソ…」


あんな言葉を信じたらこうなった。
笑っていたって何も怒らない
そんな事すればもっと傷つくだけだったのに…
なのになんで…私はずっと笑ってたんだろ



『キモチワルイ』 『アクマ』 

『サイアクノコドモ』 『フコウヲヨブコドモ』



嫌だ…あいつらの声を思い出すのも
もういない…大好きだった人の
面影を追いかけるのも…嫌だ…
助けて…誰でもいい…私を…自由させてよ…















           …お父さん…













 
   
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