猪の目の酸化還元反応
「いやいや色々な話が聞けるの楽しみにしているから大丈夫。それと彼女、モテるでしょ。僕もあと十年若かったら……」



十年どころじゃないでしょ、と遠目の奥様を感じつつ苦笑いで答える。


しかし実のところ、彼女の仕事ならと言う業界に隠れファンもいて、入社以来社内外問わずアプローチや告白する人は絶えない。



猶助もその一人で、真摯な態度に惹かれいつの間にか…という典型的パターンを自覚するのに時間は掛からなかった。



「(断り続けるのに彼氏の噂すらないんだよな…)」



仕事が恋人という感じでもないのだが、頑なな態度は猶助に疑問を浮かばせ尻込みさせる。


仕事優先でバツが付いた己が言えたことではないのだが。



「あれ?夢鼓さんお出掛けですかね?」


「うん、外回りだけど。どうかした?」



入社半年、新人編集の欣箸韓梛(キンバシ カンナ)が営業部を訪ねると、雉歳の同期入社である緕悍耀禎(カスカ テルヨシ)がスケジュール板を見て答えた。



「ちょっと聞きたいことがあって…。でも、急ぎの用事ではないので大丈夫です。」


「何?気になる。差し支えなかったら教えて?」



同期であり隠れファン故の興味だ。
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