目覚める度に、傷ついて
生きている
男子生徒になってしまうなんて思ってもいなかった。


が、幸いなことに浩志の両親は世界を飛び回っているようで、顔を合わせることがなかった。


気を使う演技をする必要がないのは不幸中の幸いだ。


かと言って家に長居していると、お手伝いさんたちになにか感づかれるかもしれないので、あたしはいつもより早めに家を出た。


家を出た瞬間、ため息が漏れる。


広い洋風の庭園が広がっていて、公園のようにベンチや噴水がある。


色とりどりの花が、道の左右に植えられていてまるで映画の中に迷い込んでしまった感覚だった。


こんなに裕福な家の子だなんて知らなかった。


浩志はいつも天真と一緒になってあたしをイジメている。


穂月や司のようなひどいイジメを行うことはないが、その分陰湿だった。


例えば教科書を隠したり、机に落書きをしたり。


そう言う小さなイジメの大半が浩志と天真によってやられるものだった。


でも……あたしは大きな門を出て首を傾げた。


浩志があたしとイジメる理由がわからない。


お屋敷のような家に暮らしながら何が不満なのだろう?


誰かを傷つけると言う事は、その分不満が貯まっているからだと思っていた。


だけど違うかもしれない。


ただ相手が傷つく顔が見たいからとか、そんな人もいるのかもしれない。
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