キミの笑顔が見たいだけ。
*第2章*

知りたくない気持ち



過ぎて行く日々の中を精いっぱい生きることに必死で、前だけを見ながら余計なことは考えないようにした。


考えると、とてつもなく怖くなる。


「サボりか?」


屋上のフェンスの前でぼんやり景色を見下ろしていると、背後から誰かに肩を叩かれた。


「や、矢沢君……!」


「たまにフラッといなくなると思ったら、屋上に来てたんだな」


風になびく髪を手で押さえながら、フッと小さく笑う矢沢君。


「う、うん……屋上から見る空が好きで」


あたしの隣に立った矢沢君は、そこから同じように空を見上げる。


雲ひとつない綺麗な青空を見ていると、心が洗われるような気がしてスッキリするんだ。


だから何も考えたくない時や行き詰まったりした時は、よく足を運んでる。


「確かにいい天気だよな」


「うん。癒される」


視線を下に向ければ、3階にあるガラス張りの渡り廊下がよく見渡せて。


たまに人間観察もしてみたり。


ひとりでぼんやり過ごすのも悪くない。


「体調は良くなったのか?あんまり顔色良くないけど」


「あ、うん。大丈夫だよ。あたし、もともと体が弱くて」


「風強いし、これ、羽織っとけ」


矢沢君はブレザーを脱いであたしの肩にかけてくれた。


フワッと香る矢沢君の匂いに、鼓動がありえないほど飛び跳ねる。


「い、いいよ!矢沢君が風邪引いちゃう!」


「俺は体だけは丈夫だから。春田に風邪引かれて学校休まれたら、俺が困るし……」


「え?」


どうして……?


「あ、いや……えっと」


ポカンと首を傾げてみせると、矢沢君はバツが悪そうに視線をそらして頬を掻いた。


「ほら……文化祭の準備とか、色々忙しい時期だしな。お前が休んだら、色々大変だろ?それでだよ!別に深い意味なんかねーし」


うろたえまくって、しまいにはうつむいてしまった矢沢君。


その横顔は、少し赤い。


「あ、そうだね。もうすぐ文化祭だもんね」


あまり深く考えないようにして微笑み返す。


矢沢君の王子様姿、楽しみだなぁ。


< 39 / 222 >

この作品をシェア

pagetop