現場系男子にご用心!?【長編改訂版】
状況の変化


――耳栓をしていても、削られるときに出る。あの甲高い音はうるさく響くものだ。




今日も変わらない毎日。
削って、確認して、また削って。

特に変化は見られない。


ただそれは仕事の内容だけであって、私の生活は見事に一変した。


お付き合いを始めて、数週間ほど経った。

会えない日はメールや電話でたわいのない話をし、岡田さんが来る日と週末は、岡田さんの家で過ごすようになった。

次の日が仕事のときは、岡田さんがわざわざ会社まで送ってくれる。

最初はその光景をここの人達に見られたとき、やたらとからかわれたものだけど、最近はそれが普通になったのか、特になにも言わなくなった。

ただ『いつ結婚するのか』と、しつこく言われるようになったのが難点であるけれど。


付き合ってからは、岡田さんの家でご飯を食べるようになった。
外食もお金が掛かるからと、大して料理も作れないのに、私からそう提案したのである。

岡田さんも、『その方がふたりきりでゆっくり過ごす時間が出来ていいね』、と快諾してくれて、仕事帰りにスーパーに寄って食材を買い、そして岡田さんの料理作りを手伝う。

ご飯を食べた後、テレビをふたりでまったりと見て、お風呂に入って、そして……。



まあなんとも、至って普通のカップルではないか。


しかし不思議なもので。

あんなに人と付き合うことを面倒臭いと思っていた私が、岡田さんと付き合ってからはそんな風に思わなくなったのだから。

むしろ、一人で部屋にいるのが妙に寂しくなるときがあって。
こう、なんて言うか、心細いというか。

人間、変わるものだなぁ、と関心する。
それと共に、これがいつまでも続くものか、少し不安になる。

人の気持ちは変わる。
当たり前になってしまえばしまうほど、それは特に。

自分もこのままの気持ちでいたいとは思うけれど、前科があるから変わらないとは言えない。

同じく岡田さんだってそうだ。

……でもそう思うってことは、それだけ岡田さんに惹かれているんだろうな。

自分でも知らない間に。


本当に不思議。
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