スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―

「わたしたち教員は出会いがないよなーって」



鶏そぼろ丼に未練がましく「ごちそうさま」をして、子どもに人気の番組がどうのこうのと、美香子先生としゃべっていたら、俊くんがデザートを持ってきてくれた。

柚子のゼリーとシャーベット、ウェハース付き。


「太らすつもりかーっ!」


「わぁ、かわいい」


わたしが吠えて、美香子先生がにっこりして、2人ともすかさずスプーンを取る。

俊くんは、空いた食器を片付けてくれながら、苦笑い気味に白い歯を見せた。


「デザートメニューは練習中なんだ。サービスするから、意見を聞かせてよ。とはいえ、そんなに自信あるわけじゃなくて」


ゼリーのほうは、くり抜いた柚子に詰めて固めたものを、8等分の櫛切りにしている。

シャーベットは果肉入り。サリッとしてトロッとした舌ざわりに、涼しい風味が抜群だ。


「おいしいよー、俊くん! これ、癖になる!」


「ゼリーというか、これは寒天? 苦味のアクセントがいい感じね」


俊くんは、ホッとしたように眉尻を下げた。

俊くんが笑うと、頬にクシャッと縦線が入る。

短くて清潔な髪型とも相まって、この上なく爽やかで少年っぽい。

学生時代は、わたしの友達に大人気だったんだよね。

「あのかわいい弟系男子、紹介して!」って。


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