スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―

「先生、おれに興味あるわけ?」



「なぎさ先生、こっちだよ!」


ライヴハウス・デュークの扉をくぐると、らみちゃんがぶんぶんと手を振った。

昨日と同じ最前列を陣取っている。

慇懃無礼な蝶ネクタイのウェイターが見守る中、わたしは素早く、らみちゃんと合流した。


「頼利さんはまだ来てないの?」


「まだだよ」


「ねえ、らみちゃん」


確認したいことがいくつもある。

らみちゃんの正面に座ったわたしは、らみちゃんの目をまっすぐ見ながら、背筋を伸ばして両手を膝の上に置いた。

あっ、と気付いたらみちゃんが、急いでわたしと同じ姿勢になる。


4の2ルールの「お話を聞く姿勢」だ。

わたしが黙って「お話を聞く姿勢」をやってみせるときは、真剣なお話があるとき。

だから、みんなも姿勢を正して、お話をする人に目と耳を向けること。

そんなふうにルールを決めてある。


「らみちゃん、質問に答えてね。先生が学校で配ったプリント、頼利さんに渡してないの?」


「渡してないよ」


「どうして? おうちの人に渡してねって、先生、いつも言うでしょう?」


「うん、だからライリには渡さないの」


「え?」


「おうちの人って誰ですかって、わたし、先生に訊いたよ。そしたら、おとうさんかおかあさんって、先生が言ったの。ライリは叔父さんだから、プリント渡してないよ」


「あ……」


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