Turquoise Blue 〜空色のベース〜

音楽室の開かない窓



「お リナのバンドの人?」



− 一瞬で理解した −








…モードを切り替える。



「ですよー!
葉山ユカといーます!
2年3組です

加藤先輩は
学校遊びに来たんですかー?!」



「あ〜。
リナがさ バンドやってて
ボーカルだから
是非見に来て〜っていうからさ」

「そーなんですかぁ!
あ、でもまだリナ教室ですよ!」

「補習でしょ
あいつホントに
学校適当みたいだからなあ」


「あ!鍵!あるんで!
今日から音楽室使えるんで!
クーラー効くし
涼しいですよ!」


慌てて鍵を開けようと
束から当たりを探す


「貸して?」




指輪がいっぱいついた
太い手

− 加藤先輩は
一発で鍵をみつけて
ドアを開いてくれた

「あ…!ありがとうご!」



膝にくっつく位
お辞儀をしていたら
私の鞄と手提げを
先輩は先に持って
入ってしまった



廊下に

ベースだけ残ってる





それだけ持って音楽室に入ると
グランドピアノの上に
私の荷物


「…なんか スイマセン」


「どういたしまして
ベースは 人に触られるの
嫌かなと思って」



…胸が痛かったし
この正体も知ってるけど


「いやー!
加藤先輩なら
ベタベタ触っちゃってくださいよ!
将来価値上がりますから!」


「上がんないって」
先輩はそういって、
おどけて両手を上げる


先輩は
一番前の席を陣取ると
そこから窓の外を見つめた



なんとなく
私は声をかけづらくなって
茶色いソフトケースを開いた




「ターコイズブルーのベース」

「え」

赤い絨毯の床に座り込み
ベースを抱えたまま
目と口をでっかくしたまま
先輩の方を振り向いてしまった


「知らない?ターコイズ
これ」


− 先輩の
ぶらりと前に差し出した
太い指についたリングの中で
1番でっかい


水色の石




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