クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~


金融機関の一日は、店内、店外の掃除と、出納機、他端末の立ち上げから始まるところがほとんどだ。

今回、派遣されたこの金融機関では、男性職員が外の掃除、女性職員が店内と決まっているようだった。

そして、内部職員は日中、営業が顧客から預かってきたものの処理と、来店した顧客からの依頼をこなす。
ATMの現金残高も随時確認し、多くなりすぎていたら回収、逆に少なくなりすぎていたら補填する。

他にも、電話対応や、給料振込みや給食費、学費の引き落としなどの登録と、細々した作業がわんさかある。

そんななか、ひとりの職員を借りてコーチするのだから、責任感を持たなくてはいけない。

私が広田さんに教えている間、広田さんが本来こなすハズの仕事は、他の誰かがしてくれているのだから。
しっかり教えないと。

そう思い臨んだ、コーチ一日目。
初めて会った広田さんを見て、ああ、なるほど……と昨日の北岡さんの話を思い出した。

「よろしくお願いします」と頭をさげた私に対して、広田さんは「ふぅん」と言った感じで私をジロジロと見定めていたから。

この仕事も、短大を卒業してからずっとだから、四年目だ。
ともなれば、色んな人と接してきたし、いちいち腹を立ててもいられないし、この程度なら慣れっこだ。

気にしないで、新しい出納機の起動方法から教えていく。



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