眼鏡とハンバーグと指環と制服と
第六章今日の晩ごはんは、ハンバーグだから
教頭先生からお宅訪問予告を受けた翌日。

私は帰宅してからなつにぃに借りたスーツケースに、一週間ほどの荷物を詰め
込んでた。

「夕葵。
歯ブラシは処分でいいんだな?」

「うん。
もうそろそろ、取り替えよーと思ってたからー」

私が荷物を詰め込んでるあいだ、一緒に来た亜紀ちゃんが、家の中の、私の痕
跡を消してくれる。

部屋以外の場所にある私のものは全部、段ボール箱に詰め込んで部屋に放り込
んどく。
荷造りがすんで、家の中をチェックして。

……万が一なにか残ってたときは、
「たまに、ごはんを作りに来てくれるから」
ってことで、誤魔化すことになってる。

それから初めて、自分の部屋に鍵をかけた。

もし、疑問に思われたときは、
「生前、母が使ってた部屋で、そのままにしとくように父からいわれてるの
で、鍵をかけて開かずの間にしてる」
と言い訳するそうだ。


でっかいスーツケースを引いて、亜紀ちゃんちに向かう。

なつにぃはこともなげにこのスーツケースを引いてたけど、ちっこい私が引く
と、ちょっと大変。
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