眼鏡とハンバーグと指環と制服と
第二十一章頑張れそうな気がしてた
そのあと、携帯は途切れなく鳴っていたけど、無視して電源を切った。
用意してくれていた封筒に、サインした離婚届と一緒にいれて柏木さんに渡
す。

タクシーで空港に連れて行かれ、飛行機に乗った。

東京に着いたのは、もう夜中に近い時間だった。
芝浦の本宅がある鎌倉には明日行くということで、この日はホテルに泊まっ
た。

翌日、迎えの車に乗せられた。
運転手さん付きで、どこからどう見ても高級車で緊張する。

連れてこられたところは、レトロモダンという言葉がぴったりの、大きな家。

「会長。
こちららが夕葵さんです」

「ああそうか」

通された応接室で待ってたら、道場の大先生よりちょっと若いくらいの、着物
姿のおじいさんが柏木さんに案内されて入ってきた。

「え、あ、えっと、七尾夕葵です。
初めまして」

「……満足に挨拶もできんのか」

立ち上がってあたまを下げたら、吐き捨てるようにそういわれた。
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