まさか…結婚サギ?

不信

正月が終わり、仕事がいつものように始まっていた。

正月を過ごして、貴哉の事を知ってから由梨の心は乱れていたけれど、貴哉は変わらずまめに電話をくれていた。その事には相変わらず嬉しくあった。

「花村さん、その後どう?」
「…相変わらず、です」

夏菜子の問いに、由梨はそう返した。

「そっか…。まだ付き合いはじめだし、しかたないかもだけど。大事な事だからね…」
「そうなんですよね…」

実家に行った事を話せば、彼の親の事もたまには話さなければいけなくなるし、由梨はここでも相談出来なくなってしまったな…と思った。
由梨も他人になら、玉の輿、良いじゃない!と気軽に言うと思うから。

由梨の勤務は、明日は休みになっていた。そう言うと、貴哉は由梨に家に来ないかと、誘ってきたのだ。

由梨は午前診が終わると、夏菜子と結愛とランチに出掛けた。前に優菜とランチをしたお店にやって来たのだ。

「あれ?夏菜子ちゃんと、結愛ちゃん、由梨ちゃんも」
そう言ったのは、貴哉の先輩の慎一だった。
彼はとても愛想よく手を振っている。
そこには珠稀と悠太もいた。ちょうど空いていた隣のテーブルに座る。

「こんにちは、今から?」
「あ、紺野なら出張に行ってるよ」
「そうですか」

由梨は慎一に笑みを向けた。

「紺野くんは、忙しい奴だけど由梨ちゃんは大丈夫?」
珠稀がそっと聞いてくる。
「仕事なら仕方ないですよね」
「由梨ちゃんはいいこだね」
慎一がそう労るように笑みを向けてくる。
「そんな事、ないですよ」

由梨は、苦笑した。いいこなら、素直で、疑ったりしないだろう。

「顔も良くて、仕事も出来るんだ?彼」
結愛が言うと、悠太が貴哉の事を自慢げにいかに凄いかを語りだす。
「そうなんだよ!結愛ちゃん!営業はNo.1だし、パソコンの処理能力は凄いし、外国語も何ヵ国も話せるし、うちの課のスーパーエースですよ…!!」
「それはすごそうだね」
結愛はふぅん?と聞いている。

「あ、そういえば。この前紺野さんにすっごい美人が尋ねてきてたんですよ」
悠太がそう言い、由梨を見た。
「美人…?」
「知ってます?モデルみたいに綺麗で、見た目だけならお似合いな感じで。でも、けっこうきつそうな…紺野さんと同類みたいな…」
「アホ。お前な…」
慎一が軽く殴る。
「だってホントの事じゃないですか!なんか、仲良さそうだったし」
「下島くん。もう、黙って」
珠稀が呆れた声を出した。
「変な事をいってごめんな。由梨ちゃん」

「悠太、デリカシーないわぁ」
結愛が抗議の声をあげる。
「え、結愛ちゃん、なんで?」
「なんで?じゃないよ。そんな事聞いたら気にするのが普通でしょ?」

ひきつった顔になってるんじゃないかと、由梨は思いつつ残りの料理を口に運んだ。

(…ダメ…一気に食欲が無くなっちゃった…)

つい半月くらい前には、あんなに幸せな気持ちだったのに…
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