まさか…結婚サギ?
彼と新しい関係

不安的中

2月となり、明日はいよいよ亜弥の結婚式という時期となり、花村家はうきうきと、バタバタとしていた。

しかし、亜弥と親たちは忙しくても由梨はいたって、いつも通り…なのだが…。

スマホを眺めて由梨は震えそうになる。
そこには、彼氏のいる女の子なら必要なカレンダーアプリ。
前回はクリスマス前に来ていた、月のもの。それが、まだ来てない。身に覚えならたっぷりとある…。

由梨の動揺もよそに、そのカレンダーは『妊娠の可能性あり』と出ている。

(わかってるよ、わかってる…)

重い気持ちで階下に下りていくと、マタニティ用の服を買ってきた亜弥がタグを切っていた。
思わずまじまじと見てしまう。
「みて、由梨。今のマタニティ服っておしゃれだよね、これとか産後も着れるんだって」

「すごいねぇ~」
と、返事をして由梨はキッチンに入って炭酸水をだした。

「そういえば由梨、あなた来てないんじゃない?」
と美香子が言ってきた。
「何の事?」
「前はクリスマス前だったでしょ?ずいぶん遅れてるじゃない」

(母…鋭い)

「由梨、私、2本入りの買ったの。一本残ってるよ」
亜弥は美香子と由梨の会話を聞いて、部屋に足早に向かっていく。
「亜弥、ゆっくりね」
「はーい」

亜弥は降りるときは慎重に降りてきた。

「はい、これ。簡単よ、ここにかけるだけだから。早速やって来たら?由梨は早い方がいいよ、正式な結婚まだなんだから」
亜弥に渡されて由梨はそのスティックを持ってトイレに入った。

そして、そのスティックと共にトイレに籠って10分。

「由梨、大丈夫?」
美香子の声に由梨はおそるおそる外に出た。

ホルダーの上に置いたままのそれを、美香子は手に取った。
「ほら、やっぱり」
「…はい…」
「明日は貴哉くんも来るんだし、ちゃんと報告、しなさいよ?」
「…はい」

(…ほんとに…ほんとに…いるの?)

そっとお腹に触れてみる。触ってみても当たり前だけど返事はない。確かに熱っぽいようだし、むかむかもしてる。気のせいって言えばそれくらいの変化。

先月はストーカーに悩まされたり、渉に会ったり、家を見に行ったりと由梨にとっては色々と事件があり、時々遅れる事もあったが、さすがに2週間以上遅れることはなかった。

でも、まさかじゃない?
そのカレンダーを見ると、確かに危険日に、シてしまってるわけで。それは由梨も、わかってるけれど…

もし、本当に出来てるなら、9月頃には産まれちゃう訳で…。由梨は…奥さんで…お母さんで…。

(なんだか…怖い…)

全てがジェットコースターのように、由梨を乗せて走ってる。そんな気がしてしまう。

貴哉の事はとても好きだし、文句のつけようのない彼。こんなに短い期間で…本当に良いの?

由梨はがばっと身を起こした。

「お姉ちゃん」
由梨は亜弥の元へ向かった。
「お姉ちゃんの行ってる病院ってまだ間に合うよね?」
「あ、今から行くの?」
「くよくよするよりも、行って確かめる」
「あら、じゃあお母さんが一緒に行ってあげる。そんな動揺したまま運転しちゃダメ」

由梨は母と共に病院に向かう。
当たり前だけど、待ち合いにいるのは女性と妊婦さんばかりだ。

由梨は問診に記入して、その時を待った。
医師に話をして、服を脱いで椅子に座ると、台が上がると脚台が脚を開くようになる。

モニターの画面を向けられて、
「花村さん、見えますか?」
「はい」
「ここに、しっかりと写ってますね。心臓もちゃんとチカチカしてるし、元気みたいね」
まだ丸い中に人の形にもよくよく見えるような…そんな姿。
「…ん?もしかして双子かな?」
「双子?」
「来週にははっきりするかな」

診察室に戻ると、
「胎のうと心拍がふたつ写ってたから、双子だと思いますよ。花村さんは、まだ結婚はしてないようね。早く話し合って、双子だと早くにお腹も大きくなるし、リスクもあるから」
「あ、はい」

エコーの写真をもらい、由梨は母の元へ向かった。
「どうだった?」
「うん…なんだかね、双子みたい」
「えー?双子?」
「凄いじゃない」
「…どうしよう…」
「なにが、どうしようよ。しっかりするの。しなくちゃ、ね?お母さんも、お父さんもまだまだ元気よ。手伝うから、安心しなさい」


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