別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~
再会
奏人との衝撃的な別れの日から二週間。

スローペースながらも、心の傷を癒していた私の前に、突然奏人が現れた。

彼はなぜか朝の朝礼の時、部長に連れられてオフィスに入って来たのだ。

私はあまりの衝撃に目眩がして、ひっくり返りそうになってしまった。

私の所属する国内営業部に、中途採用の人が入るとは聞いていたけれど、まさか奏人だなんて予想出来るはずが無い。

それに奏人は転職の話なんて一切しなかった。

日程的に、あの別れの日よりも前に決まっていたはずなのに。


「北条奏人です」

奏人が自己紹介始めたけれど、ろくに頭に入って来ない。

更に驚いたのは、奏人は私の知っている奏人とは外見的に全く違っていた事だ。

いつもユルい服装の奏人が、完璧なサイズ感の明らかにブランド品だと分かるスタイリッシュなビジネススーツを違和感無く着こなしている。
長い手足が際立ち、スタイルが良く見える。

ボサボサだった髪は綺麗にセットされ、今まで隠れていた整った顔立ちが良く見えるようになっていた。

眼鏡も着けていない……コンタクトにしたの?

いや、いつも着けていた眼鏡の方がフェイクで、実は度が入っていなかったのかも。

今となっては、奏人の事は何一つ信じられないから、今迄の何もかもが偽りに思える。

部長の隣に立つ奏人の姿が、私の知っている奏人じゃないから余計にだ。


今の奏人なら、梓も絶賛すると思う。

だけど私は、優しい笑顔の代わりに、油断無く鋭い視線を巡らす奏人を受け入れられない。

それなのに、奏人は最後に私に視線を留めると、真っ直ぐ見つめたまま視線を逸らさない。

こんな風に見つめ合っていては、他の社員に変に思われる。

不安になりながらも身動き出来ないでいると、部長の話は終わり、奏人は冷ややかな表情のまま、私から視線を逸らしその場から離れて行った。
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