別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~
詐欺
奏人と付き合って一周年、かつプロポーズ後にとんでもない嘘を暴露された記念すべき日は、木曜日でした。


と言う訳で、精神的なダメージと、寝不足による頭痛を抱えながらも、朝がくれば満員電車に乗り会社に向かう。

ああ……こんな日は一日中悲しみに暮れていたい。何もしないで、ゆっくりと過ごし心を癒したい。

電車の揺れに耐えられず、つい押してしまった女子高生に舌打ちをされ、身を縮めながらしみじみ思う。


でも、現実は働かなくちゃ生きていけないから、私には会社に行く選択肢以外ない。

ラッシュの影響で15分も遅れてしまった電車を降りて、猛スピードで改札を出る。

駅から会社までは通常徒歩10分。
でも今、私に与えられた時間は5分しかない。

走り辛いヒールでひたすら走る。

運動不足の身体は、思う様に動かない。
1分で早くも息が上がってしまう。

何で私がこんな目に!

奏人には騙されるし、女子高生には睨まれるし、乗った電車は遅延するし。
走り過ぎて喉は痛いし。

昨日から運に見放されてる感が凄い。

人目も気にせずぜいぜいと必死の形相で走り、なんとか遅刻せずに会社に到着。

ヨロヨロと席に着いたところで、始業のチャイムが鳴りました。
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