縁側で恋を始めましょう
9・


ーーーー

「大丈夫なの?」

香苗が心配そうに顔を覗き込んでくる。

「大丈夫……じゃない」

大丈夫なんかじゃないよ。

うなだれる私の頭を香苗は困ったようによしよしとなでる。
最近めっきり落ち込み気味の私を気遣い、香苗がいつもの店に飲みに誘ってくれたが、私はため息ばかりついていた。

暁が家を出てから半月。

あれから消息が取れなかった私は捜索願でも出そうかと再び冴島家へ行くと、暁の父から意外な言葉が出た。

「暁ならしばらく海外へ行っているみたいだぞ」

どうやら、最初に冴島家へ訪れた時点で、暁の父は暁から海外へ取材に出た旨の連絡を受けていたらしい。
それを家族に伝えることをすっかり忘れていたそうだ。


< 100 / 125 >

この作品をシェア

pagetop