エリート専務の献身愛
●番外編
 ――浅見さんが日本に来てから約一か月。

「またいつもにも増して浮かない顔してるわね」

 彼女は、網の上で美味しそうに音を出す肉をトングで取り、上手に箸で掴みあげる。

「本当。辛気臭い人が近くにいるだけで、こっちまで伝染しそうになる」
「すみません」

 確かに、食事中なのにうっかり悩みを顔に出してしまった。そう思って、素直に謝る。

 頭を下げた視界に、隣に座る彼の腕が見えた。
 顔を戻すと、彼は私のお皿に焼けた肉を取り分けてくれている。そして、対面に座っている彼女に言い放つ。

「レナ。あまり瑠依をいじめるな」

 ぴしゃりと言われたのにも関わらず、レナさんは飄々としている。
 お酒を飲んで、もうひと切れ肉を頬張った。

「だいたい、なんで三人でディナーしなくちゃならないのよ。わたしのポジション、微妙じゃない」

 向かいに座るレナさんは、私から浅見さんへ視線を動かし、頬杖をつく。

「総が余計よね」
「レナだろ。空気読めよ」
「そのままそっくりお返しするわ」

 こういう言葉の応酬は、どうやら日常茶飯事のよう。

 つい最近知ったけれど、浅見さんとレナさんは同い年らしく、それもあってか割と普段は対等な会話をするみたい。
 でも、仕事となれば、以前のようにレナさんはちゃんと秘書になるんだろうけれど。

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