エリート専務の献身愛
彼と彼女

 うちの会社は、週に二、三度、朝は医薬品卸売会社に直行するように言っている。
 卸にいる人は私たちにとって、医薬品を適正に使用してもらうために日頃から情報交換を行いながら協力し合う大切なパートナー。信頼関係の構築が大事だと教わった。

 卸に着くと、まずは支店長に挨拶。それから課長。そして、営業社員。

「おはようございます、紺野(こんの)さん」
「あ、城戸さん。今日はどこに行く予定?」

 私より五つ上の紺野さん。
 彼とは私が入社してすぐの付き合いで、当初緊張していた私も今では気軽に話ができるようになった。

 気さくで人柄もいいから、気軽に色々な話ができる相手だ。
 紺野さんはいつも挨拶代わりに、スケジュールを聞いてくる。

「笹川先生と約束しています。もうすぐ説明会もありますし」
「ああ。笹川先生か。そういえば、昨日おれが行った時に、出身地の話になって。同じ九州だーなんて盛り上がったよ」
「え! そうなんですか」

 私が感心してしまったのは、笹川先生とはあまり話が盛り上がった試しがないからだ。
 明るくて話も上手な紺野さんだからなんだろうな。

 羨望の眼差しを向けつつ、話を続ける。

「へぇ。ていうか、紺野さんって九州出身だったんですね」
「知らんやった? 最初は油断しよったら、方言でちゃうから気ばつけとったばってん、今はもう慣れたちゃ」

 突然方言が飛び出てきて目を丸くする。
 なんだか私の知る紺野さんじゃなくて、別の人みたい。

「そんなに驚かなくても」
「あっ、す、すみません。意外すぎて」

 今まで、紺野さんの方言を耳にしたことがなかったから。

 驚いている私を見て、紺野さんは笑う。

「キャラ変わって感じるよね。逆に地元のヤツなんかには、標準語を喋ってるとからかわれるし」
「そうなんですね。でも確かに、話し方でイメージって結構変わりますもんね」

 紺野さんの話に小さく頷いて納得する。
 そんな雑談をしながら時計を確認した。

「あ、もうこんな時間。お忙しいのに失礼しました」

 頭をペコッと下げ、顔を上げると紺野さんが手を差し出している。
 私が手を重ねると、紺野さんは軽く握って言った。

「今日もお互い頑張ろう」
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